盛り上がらない試合 | 普通の人が読むサッカー

盛り上がらない試合

 プロ野球日本シリーズが全然盛り上がっていないそうです。名古屋(中日)ではそれなりに盛り上っているそうですが、所沢(西武)はそうでもなくて、そもそもプロ野球では全国的な盛り上がりがないとダメなようです。

 結局、スポーツ観戦というのはスポーツそのものよりも、盛り上がったかそうでないかで、その価値を決められてしまいます。私が観たJリーグの試合の中で、最も盛り上がらないとされた試合は、Jリーグ暗黒時代の真っ只中、99年の3月某日、国立競技場での鹿島-広島戦でした。

 その日はとても寒かったのです。ひたすら寒かった。全然お客さんがいません。ゴール裏のわずかにサポーターが震える声を絞り出すのが精一杯。
 春先で、昨日まで暖かかったため、薄着で来たのが間違いでした。国立はほとんど屋根がないため、ダイレクトに雨交じりの冷たい風がぶちあたります。間違いなく体感温度は零下。

 「どっちでもいいから、90分で勝ってくれ!」試合開始前から、ただそれだけを願っていました(当時は90分で決着がつかない場合延長戦があった)。鹿島アントラーズ発足以来のファンであるこの私が、勝利以外のものを優先した唯一の試合でした。

 そんな状況にもかかわらず、両者譲らず、前半0-0。ばか!ばか!お前らの戦いぶりにこんなにガッカリしたことないわっ!
 途中で帰ろうにも、私と友人が座っていたのはサポーター席のど真ん中、ちょうど鹿島サポーターの応援団長(という名前なのかはわからないが、それっぽい人)の真後ろです。試合途中で席を立ってしまったら、Jリーグ一過激なサポーターたちにどんな目に合わされるかわかりません。

 しかしそのサポーターたちも、さすがにこの劣悪な環境に、だんだん応援の声も小さくなり、そのうちまったく声が出なくなってしまいました。すると、私の目の前にいた団長が「寒いのはわかる!俺脱ぐから!お前らも声だしていこうぜ!」と言って、おもむろにアントラーズスタジャンを脱ぎ去り、上半身裸になって激を飛ばしました。
 団長の体から立ち上るおびただしい湯気。それをきっかけに、みんな変なスイッチが入ってしまい、全身全霊、力の限りに応援しました。あれほど、一体感のある応援に参加することはもう二度とないでしょう。

 結局後半30分ぐらいだったと思うのですが、鹿島が1点とって勝ち、試合は無事90分で終了しました。試合そのものの内容は様々なことに気を取られていてよくわかりませんが、おそらくダメでした。

 この試合は国立競技場始まって以来の最低動員を記録しました。私はこの試合のことを一生忘れません。

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