三ツ沢で会いましょう (6) - 30分をめぐる戦い - | 普通の人が読むサッカー

三ツ沢で会いましょう (6) - 30分をめぐる戦い -

 私の大学時代からの友人に、浦和レッズの試合をしょっちゅう見に行く人物がいます。彼は特に浦和レッズのファンというわけではなく、浦和レッズファンの彼女を持ってしまったので、半分仕方なく試合に足を運んでいるようです。
 彼の家から浦和レッズのホームスタジアムまでの所要時間は約1時間30分、「少し辛くなってきた」と言ってましたが、「オレなんか鹿島スタジアムまで3時間かかる」と言って慰めておきました。

 前回も使った観戦者調査報告という資料には、観戦者がいったいどれだけの時間をかけてスタジアムに足を運んでいるかを調べることができます。
 スタジアムによってもちろん差があるのですが、Jリーグ平均では36.2%が片道30分以内でスタジアムまで来ています。30分~60分の範囲では32.3%、60分~90分では12.4%、90分~120分で7.2%、120分以上は11.9%でした。
 時間が距離に比例すると考えれば、面積は距離の二乗ですから、スタジアムに近ければ近いほど、サッカー観戦者の密度が高くなっていると言えます。まあ、あたりまえのことですが、サッカーを見に行くための条件の一つは近所にスタジアムがあることだと言えそうです。

 上の地図の青い線は、横浜FCのホームスタジアムである三ツ沢球技場からなんとか30分以内でいけそうな範囲を鉄道路線で示しています。この青い線の周辺エリアが横浜FCの試合を見に行きやすいエリアということですので、つまり、横浜FCがファンを獲得するために最適のエリアといえます。
 一方、横浜F・マリノスのホームスタジアムである横浜国際競技場から30分の路線を赤い線で示してみました。また、横浜国際は三ツ沢と違い駐車場が充実していますので、車を利用した場合に30分で行ける範囲を赤のグラデーションで示してみました。
 ご覧になってわかるとおり、中心部から北にかけて、横浜FCとF・マリノスのエリアは実は大きくかぶっているのです。

 横浜FCとF・マリノスの互いのファンは、このように混在したエリアに住んでいる可能性があります。とくに混在していると思われるエリアを黄色で示してみました。ファン獲得のためには、この混在エリアでの営業活動が重要なポイントとなって来るでしょう。
 逆を言えば、南側のエリアでは横浜FC有利と言えないこともありません。地図の南側のエリアでは三ツ沢のほうがアクセスが良いからです。
 この連載を始めて一ヶ月、ついに横浜FC有利のデータがあらわれたのかもしれません。

 ところがそうは問屋が卸さないのが、F・マリノスです。
 F・マリノスは先日、横浜市の中心部みなとみらい地区にゴージャスなクラブハウスと練習場を建設することを発表しました。この地図で言えば桜木町のあたりです。さらに、横浜市の南にある横須賀市をセカンドホームタウンにしてしまいました。
 横浜市のど真ん中に営業拠点を設置し、南からもじわじわと横浜市民を取り込んでいくとは! さすがはJリーグチャンピオン。大人げないが、壮大な作戦です。

 どうする!どうなる!横浜FC!

 次回『三ツ沢で会いましょう』ついに感動の最終回!